そのキスで、忘れさせて
そんな訳で、あたしはマネージャーのけいちゃんの車で自宅に送ってもらうことになる。
人の良さそうなけいちゃんだけど、何を話していいのか分からなくて。
「すみません……ご迷惑をおかけして」
謝ることしか出来なかった。
遥希とあたしのことで、けいちゃんにはすごく迷惑がかかっている。
そんなこと、百も承知だった。
それなのに、
「すまないね、遥希が迷惑かけて」
けいちゃんは、優しげな顔であたしに謝る。
そんなけいちゃんに、思わず聞いていた。
「可能性はあるんですか?
……遥希とあたしが……
あの……結婚出来るって」
そう口にしながら、やっぱり思ってしまった。
如月ユイカのことを。
遥希の言葉を信じたい。
だけど、あたしの心の中には誠に浮気されたことが、トラウマのように残っているのだ。