そのキスで、忘れさせて
ー隆太sideー
「悪いな、呼び出して」
そう言って、遥希君は僕の前に座った。
「珍しいね。
てか、初めてじゃない?
君が僕に話を聞いて欲しいなんて」
僕は遥希君に言う。
いつも憎まれ口ばかり叩く遥希君が、憔悴しきっていた。
いつもの仕返しに酷いことを言ってあげたいけど、そんなこと言える雰囲気でもなかった。
それでも、遥希君は僕に喧嘩を売る。
「結局、チンカスしかいねぇ。
ハゲは俺を別れされたいみたいだし、陸は人に興味ねぇ。
勇人はチャラいから、美咲を取られるかもしれない」
「被害妄想だね」
僕はため息混じりに言った。
「君、今回は本気だから、僕たちみんな応援してるのに」
その言葉に、遥希君は黙った。