そのキスで、忘れさせて
あたしの住むマンションに着く。
相変わらず小さい、惨めなマンション。
だけど、あたしの身の丈にあったマンションだ。
遥希、待っていてくれないかな?
淡い期待を抱いたものの……
「美咲」
あたしを呼んだ人は……
遥希ではなかった。
一瞬、遥希かと思って心が踊った。
でも、遥希ではないことが分かると、酷く失望した。
一瞬でも期待してしまった自分が愚かだ。
振り返ったあたしの前に立つ彼は……
遥希よりも背が低く、中肉中背。
スーツを着た、
「誠」
だったのだ。