そのキスで、忘れさせて




瞬時に身構えた。

そして、すごい顔で誠を睨んでいた。

あんなに誠が好きだったのに、今では関わりたくないとまで思ってしまう。

だって、誠は浮気相手を妊娠させたのに、あたしと復縁を望んだから。





「……何?」




後退りしながら誠に言う。

誠は悲しげな顔で、



「僕、嫌われてるね。

嫌われてるから、これで最後にするよ」



と言う。

愚かなあたしはそんな誠に同情して、話を聞いてしまう。





「僕のクレジットカードがどうしても見つからないんだ。

もしかして、美咲の部屋にあるかな、と思って」



「そうなんだ」





怪しいなんて思わなかった。

だからあたしは何も考えずに、誠を部屋に入れていた。

もしかしたら、誠のクレジットカードがあるかもしれない。

クレジットカードが見つかったら、帰ってもらおう。

それだけしか考えていなかった。

結婚式の日、あれだけ遥希に忠告されていたのに。



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