そのキスで、忘れさせて
部屋に入り、扉を閉める。
誠は、
「久しぶりだね、美咲の家」
なんて言いながら、リビングへと入っていく。
誠の荷物が無くなっただけで、あの頃と何も変わっていないリビング。
そのリビングに誠がいるのも、なんだか見慣れた光景だった。
だから、油断していた。
そして、
「彼氏とはうまくいってるの?」
不意に聞かれたその言葉に、何も言えなくなった。
遥希とは……
十日間も音信不通だ。
しかも遥希は、元カノとスキャンダル中。
俯いたあたしに、
「うまくいってないんだ」
図星なことを言う誠。
そんな誠を睨んでいた。