そのキスで、忘れさせて





あんなに惚れて惚れて惚れた誠なのに、今は全くときめかない。

このまま遥希と終わっても、そんな関係になるのかな、なんて思ってしまった。






遥希のことばかり考えるあたしの耳に飛び込んできた、誠の言葉。





「じゃあ、僕にもチャンスはあるわけだ」




その言葉で我に返った。




「誠にチャンスは……





チャンスはない!




慌ててそう言おうと開いた口を……唇が塞ぐ。

数年間、慣れ親しんできたその唇に。

だけどその唇はもう、あたしをときめかせることなんてない。




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