そのキスで、忘れさせて







「何やってんだ!!」




その声で我に返った。

その声は恐怖を吹き飛ばし、あたしを安心させる。

そして、こんな状況なのに胸にきゅんと染み渡る。





あたしの上で、誠が身を強張らせた。

そして、真っ赤な顔で振り返る。





誠の向こうに……

大好きな遥希が見えた。

目深に被った帽子と眼鏡で、表情は分からない。

だけど、遥希を見たら涙が出た。

言い表せない、複雑な気持ちとともに。



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