そのキスで、忘れさせて
「大丈夫だから」
ぽろぽろと涙を流すあたしに、遥希は言った。
その傷ついた左頬を冷やしながら。
そんな遥希に、ごめんなさいと謝るしか出来ない、愚かなあたし。
あたしはまた、遥希を傷つけた。
しかも……
命だと言える遥希の顔にまで、傷を付けた。
謝っても許されるはずがない。
遥希が愛想を尽かすのも当然だった。
「ごめん……なさい」
あたしの声は震えている。
声だけじゃない、全身が震えている。
「遥希の顔……」
「イケメンのはずが、ブッサイクだろ?」
遥希は笑うのに、あたしは笑えるはずもない。
そしてまた、ごめんなさいと謝るのだった。
ごめんなさい、誠を家に入れて。
誠にキスされて。
胸まで触られて。
そして、遥希の顔に傷つけて。