そのキスで、忘れさせて









どのくらい、玄関に突っ立っていただろう。

時計は時刻をゆっくり刻み、部屋の中が暗くなりつつあった。

あたしは魂が抜けたようにふらふらとリビングに戻り、ソファーに崩れ落ちた。

テレビではまだ、如月ユイカの話をしていて。

……いや、遥希の話もしていて。

おもむろにチャンネルを変えた。

だが、どのチャンネルも如月ユイカと遥希の話題が飛び交っていて。





「これは……遥希さんのファンが許さないでしょうね」




その言葉に恐怖を覚え、テレビを切った。





やっぱりそうなんだ。

あたしたちの交際は、許されないんだ。





絶対に打ちひしがれる中、玄関のチャイムが鳴った。

モニターで見ると、なんと藤井さんが映っていて。

慌てて家の中に招き入れた。



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