そのキスで、忘れさせて
仕事を終え、家路につくあたし。
一縷の望みをかけて、遥希の家に向かう。
もしかしたら、遥希に会えるかもしれない。
だけど、遥希がいないような予感はしていた。
遥希は事務所の人に、家に帰らないように止められているのかもしれない。
あたしと別れるように、言われているのかもしれない。
身分に合わない高級マンションのエントランスをくぐる。
そして、エレベーターに乗り、最上階を押す。
あと何回だろう、こうやって遥希の家に来れるのも。
考えるだけで、涙が出た。
好きです。
遥希のことが、大好きです。
だけど……
遥希はこれからも輝く大スター。
あたしと付き合うことで、遥希が輝きを失ってはいけない。