そのキスで、忘れさせて
「事務所は何て?」
その言葉に、やっぱり苦い顔をする遥希。
その顔を見て分かった。
あたしたち、引き裂かれると。
「だから……結婚しよう」
遥希は泣きそうな顔で言った。
「俺はもう、引退してもいい。
好きな女すら手に入らない生活なんてごめんだ」
駄目だよ、そんなの。
遥希は大スター。
こんな終わりかた、いけないよ。
そう思うけど、遥希を握った手を離すことなんて出来なかった。