そのキスで、忘れさせて




テレビの中の藤井さんは、陽気な藤井さんなんかではなく。

いつものようにクールなカリスマオーラを纏っていた。

そして、にこりともせずにこっちを見る。

そんな彼の隣で、碧が続ける。





「今日歌わせていただく『Pigeon』ですが、恋人の幸せを歌った曲なんですよね」





ズキンとする。

Fは恋人の幸せを歌うのに、あたしたちは終焉を迎えているのか。

そんなあたしの気持ちをよそに、尚も碧は話を続けた。




「俺たちにもそれぞれ、大切な相手がいます。

人間だったら恋人や妻がいる。

それは普通っすよね?」




またまたズキンとした。

大好きな碧の言葉なのに、こんなにも傷つくなんて。



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