そのキスで、忘れさせて






斜め前の交差点に、二人はいた。

少し長めの黒髪に、コート姿の彼。

彼の横には、小柄で髪の長い女性がいた。

愛しそうに彼に腕を絡め、身を寄せている。





ズキンとした。

あの女性なんかじゃない。

誠の隣には、あたしがいるはずだったのに。

ぶっ飛んだハルキのせいで一時的に忘れていたけど……でも、こうやって目の前にすると、やっぱり思う。

悲しくて、寂しくて、これからどうやって生きていこうなんて思ってしまう。

あたしの生き甲斐は誠だった。

あたしには誠しかいなかったし、誠にはあたししかいないと思っていた。




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