そのキスで、忘れさせて
「ごめん……」
彼……あたしの彼氏、誠は頭を下げる。
そんな彼を、可哀想と言わんばかりの表情で見る彼女。
ちょっと待って。
可哀想なのはあたしだよね?
あなた、加害者だよね?
「美咲のことは、本当に好きだったよ」
好きだった……ね。
「だけど今は……」
申し訳なさそうに言う彼に、
「あたしのほうが好きなんだって」
彼女は甘い声であたしに告げた。
どろどろに溶けた砂糖みたいに甘い声なのだが、その顔は勝ち誇ったようにあたしを見ている。
そう……
どうせあなたが勝ったんだ。