そのキスで、忘れさせて
彼女は誠に腕を絡ませ、頭を肩に乗せる。
そのポジションは、あたしの場所だったのに。
誠に身を寄せる女性は、あたししかいないと思っていたのに。
自惚れだった。
あたしが自惚れている間に、誠はこの小悪魔、いや、悪魔のような女性と愛を育んでいたのだ。
その証拠に、
「僕たち、結婚することにした」
「……え?」
その言葉に耳を疑った。
「ごめん……美咲」
ごめんなんて言ってもらいたくない。
ごめんなんて、どうせ思っていないんだから。