そのキスで、忘れさせて
ぶち壊したい。
あたしの幸せをぶち壊したみたいに、この二人を。
でも……
なぜだか分からない。
「お幸せに」
あたしは笑顔で立ち上がっていた。
誠はあたしを驚いて見る。
そして、
「今まで、ありがとう」
静かにその場を立ち去る。
我ながら驚くほどの大人の振る舞い。
まるでドラマのような。
だけど、頭は空っぽだった。
何も理解出来ない。
ただ、誠はもう、あたしのものではないということだけ。
その事実が痛いほどあたしにのしかかる。
涙すら出ず、時折車のヘッドライトに照らされるその道を、亡霊のように歩いていた……