そのキスで、忘れさせて
鼓動は速い。
心臓が止まるのではないかと思うほど。
そして、頭はボーッとする。
現実を受け止められなくて。
「こういう少し洒落た店、大切な人と来たいよね」
遥希は相変わらずの笑顔で陸に言う。
そんな遥希の発言を聞いていた周りの野次馬が、きゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げた。
そしてあたしは……
心臓が口から飛び出すかと思う。
「またまたぁ!
一応聞くけど、遥希はどんなシチュエーションを想定したの?」
「そうだね……」
遥希は柔らかい笑みを浮かべる。
その顔を見ると、不覚にも胸がきゅんと鳴った。