そのキスで、忘れさせて







オートロックを抜け、エレベーターに乗る。

扉が閉まる寸前に、このマンションの住人の女性が乗ってきた。

その女性は、帽子にマスク、眼鏡姿のハルキから、見てはいけないものを見てしまったように目を逸らした。

それも当然だ。

改めてハルキを見ると、怪しいことこの上ない。





そしてとうとうエレベーターは三階につき、ドアが開く。

鼓動は相変わらず速く、このままハルキとどうなってしまうのか想像もつかなかった。






「あたし、あんたと付き合ってるの?」



苦し紛れに聞くと、



「……じゃなきゃ、何だ」



ハルキは低く呟いた。


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