そのキスで、忘れさせて
あたしは、夜の大通りを歩いた。
車道を車が猛スピードで駆け抜けていく。
ここへ飛び込むことが出来たら、楽になるのかな。
もう、何も考えなくて済むのかな。
誠はあたしの全てで、あたしは全てを賭けて誠についていくつもりだった。
……そう。
結婚するのは、あたしのはずだった。
車のヘッドライトが広告塔を照らす。
何の広告か分からない。
ただ一瞬、人物が見えた。
そいつはあたしを見て、嘲るように笑っていた。
あたしは思わず足を止め、彼を睨み上げていた。
何の罪もない、彼を。