そのキスで、忘れさせて








あたしは、夜の大通りを歩いた。

車道を車が猛スピードで駆け抜けていく。

ここへ飛び込むことが出来たら、楽になるのかな。

もう、何も考えなくて済むのかな。

誠はあたしの全てで、あたしは全てを賭けて誠についていくつもりだった。

……そう。

結婚するのは、あたしのはずだった。







車のヘッドライトが広告塔を照らす。

何の広告か分からない。

ただ一瞬、人物が見えた。

そいつはあたしを見て、嘲るように笑っていた。

あたしは思わず足を止め、彼を睨み上げていた。

何の罪もない、彼を。




< 8 / 384 >

この作品をシェア

pagetop