そのキスで、忘れさせて





一瞬の沈黙。

ハルキはまだ、並べてあるFグッズを見ている。

眼鏡で隠されている目元は、やっぱり堀が深くてかっこいい。





やがて、ハルキはゆっくり口を開いた。





「まあな……

数回会ったことはある」



「え……」




あたしはぽかーんとハルキを見た。

考えたくないけど、やっぱり……





「俺はよく分からねぇけど……

チンカスは仲良いみたいだな」





何言ってんの?

ハルキ、全く意味不明なんだけど!





「ち……チンカス?

……チンカス!?」




その言葉を反芻する。




なに!?

チンカスって、何!?





そんなあたしを見て、さもおかしそうに笑うハルキ。

女がチンカスとか言うな、なんて言って。

チンカスって言ったのは、ハルキのほうでしょ?



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