そのキスで、忘れさせて





ハルキは帽子に手をかける。

帽子からは、ほわっとした焦げ茶の髪が溢れた。

そして、顔を覆うマスクをゆっくりと外し……

あたしは不覚にも、彼に見惚れていた。






何度もテレビの中で見た彼がそこにいた。

最近は『日曜日の恋人』の彼にハマっていた。

優等生で、真面目で、スターオーラ満載で、キラキラしている彼。

そんな彼だけど……

あたしの前にいる彼は、もっとどす黒くて、俺様で、やんちゃで。

いつもは人の良さそうな笑顔を浮かべている顔で、おかしそうにほくそ笑んだ。



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