そのキスで、忘れさせて








遥希はやっぱり忙しいらしい。

その後連絡は来ることがなかった。




誠の荷物を返すようにと言われても、誠と連絡を取るのが怖い。

ましてや、会うなんて問題外だった。

あたしの心は確実に遥希に揺れているのだけど、まだ完全じゃない。

時折、誠との楽しい思い出が頭をかすめるのだ。




最後のお別れは、笑顔でしたい。

浮気という残念な結果だったけど、誠といた日々はとても幸せだったから。






あたしは何気なくテレビをつける。

さぁ、録画しておいた『日曜日の恋人』でも見るかな。

だけど……

それも勇気がいる。

テレビの中の遥希を見るのは、なんだかくすぐったい。

今までは平気だったのに。

だけどストーリーがどうしても気になって、あたしはボタンを押していた。



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