そのキスで、忘れさせて
ごくり。
息を飲む。
物語に夢中になりながら、何となく嫌な予感がした。
だって……
二人の距離が近くなり、どんどん甘いムードになっていくから。
「優子ちゃん、大丈夫だよ」
渉はそう言って、優子の背中に手を回す。
胸がちくりと痛む。
そして、あたしの本能が警告を発していた。
ここでやめなきゃ。
これ以上、見てはいけない!
だけど、あたしが心配しすぎだということを確認したくて。
何もないと思いたくて。
テレビを消すことが出来ない。
そんなあたしの思いも、虚しく打ち砕かれることになる。