肉食御曹司に迫られて

「すみません。どちらに？」
と声を掛けられた。
湊は、やっぱり。と内心思い、振り返り藤堂をまっすぐに見た。
「あなたはどちらに？602号室ですか？」
湊も少し挑発するように、しかし冷静に言葉を発した。
藤堂は、湊の言葉に少し驚いた顔をしたが、
「どうしてお分かりに？」と聞いた。
「あなたは、俺の買い物を見てそう思われたのでは？病人への差し入れ。同じだったのでは？」
藤堂は、湊から目を逸らすことなく、
「そうです。」
と答えた。
「彼女が待ってますので、失礼します。」
湊としては、男がいることを藤堂に印象づけることができればよかった。