肉食御曹司に迫られて
しばらくして、晃は聞いた。
「湊、さっきの親父さんの上げた、条件でクリアしている物、あるのか?」
湊は少し考えると、
「…容姿はクリアかな。お前も知ってるよ。ピアノ演奏をしている、NANA。」
「…はっ?お前、振られてたよな?」
晃は、心底驚いた顔をした。
「あの時より前に声かけた。あの江ノ島の店。そして、社長として声をかけた時は、ほぼ俺の顔も見ず断られたから、向こうは、社長の俺には気づいてない。」
湊は淡々と語った。
「とりあえず、親父と話す。他の男も出てきて、あまりのんびり出来なくなった。」
「なんだそれ?」
「こないだ、家に見舞いに行った時、ホテルマネージャーの藤堂さんと鉢合わせした。そして、牽制された。奈々に近づくなって。」
湊は、自分を蔑むように言った。
「俺の女に手を出すな!!とか言いたいところだな。ホントは。」
晃は、湊の肩をポンと叩くと少し笑った。
そして、
「親父さん…どう出るかだよな。あの親父さんのことだ…。一筋縄ではいかないだろうし…。」
それは、湊が1番わかっていた。
(ー そして、奈々の気持ちも、俺にあるのか?)
でも、それを確かめるためにも、俺にはやるべき事がある。