肉食御曹司に迫られて
コンコン。
「湊です。」
「入れ。」
低い父の声がした。

父の正樹は、机の書類から顔をあげ、眼鏡を外すと、
「お前が来るなんて、珍しいな?何の話だ?」
と、湊に目を向けた。

本が壁いっぱいにあるこの部屋は、まさしく書斎その物だった。
机の前にある、応接セットに座るように促されたが、湊は立ったまま頭を下げた。


「お願いがあります。昔の約束を破棄してもらえないですか?…好きな女性がいます。」
正樹は驚いた表情を見せたが、
「破棄しなければいけない女性ということか?」
「…そうです。普通の女性です。」
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