肉食御曹司に迫られて
結花の声に、周りの人が、こっちを見た。
「…ちょちょ、声が大きい。」
結花も少し慌てて、
「ごめん。」
と声のトーンを戻した。
「そうだよね…。でも、あたしもさ、あんまりいろいろ自分のこと話さなかったし、向こうもあたしが、何してるか知らない。」
「あー。まあ、結婚とか考えなきゃ、あんたの場合、いろいろ話さないか…。」
結花はため息交じりに言った。そして続けた。
「でも、悩んでるってことは、未来を考えたいって思ったんじゃないの?なかなか、自分を出せない奈々が、人を好きになるなんて、めったにないんだし。少しずつでいいから、自分のこと話して、相手の事も聞いてみたら?…それでもダメなら遊び確定だね。」
最後は軽く言った。
「そうだね…。ありがとう。」
奈々は微笑んだ。

(ー 遊び確定…。)
確かに、あれだけ女慣れしてて、あの顔。
モテない訳がない。
最初もナンパだし、出会ったのも、次に会ったのも、ただの偶然。

運命や必然の出会いなんて、ないのかな。

奈々が少し落ちいている横から、結花は楽しそうに言う。
「ねえ、今日迎えに来てもらうとかできないの?遊んでそうな男かあたしが見てあげる。」
結花は、にやっと笑った。
「いや、無理だよ…。職場の飲み会になんて。」
「仕事を隠す理由ないじゃん。」
「そうだけど…、それに、そもそも付き合ってもないのに、そんな事頼める?」

あーだ、こうだと結花のコンパの話などもしているうちに、時間は楽しく過ぎていった。
こっそり、隠れるようにいた為、特に誰かに関わることもなく終わりそうかな。とほっと胸を撫でおろした。
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