肉食御曹司に迫られて


「すみません。先日は失礼しました。彼女は連れて帰ります。」
という声と共に、後ろから腕を掴まれた。

奈々は、まさか⁈と振り返ると、湊がいた。

奈々は、びっくりして言葉が出なかった。
それは、藤堂も結花も同じようだった。

湊はいつもより冷たい、真っ黒な瞳をまっすぐ、藤堂に向けた。

藤堂も、目を逸らさなかった。



そんな変な空気を感じたのか、結花は、
「始めまして。奈々の友人の水谷です。」
と湊にニコッと笑い挨拶をした。
「初めまして。」と湊も挨拶した。

奈々は、やっとの事で声を出した。
「どうして?」

「お前、いきなり電話が切れて、繋がらなくなったら、何かあったのかと思うだろ?」

「あ…充電切れたんだった。ごめん。」
奈々は思い出したように言った。

突然現れた湊に、女性社員は顔を赤くしていた。
今日も、相変わらず、雑誌から出てきたようだった。

≪さすが、水澤さん、かっこいい人…彼氏かな?≫

≪モデルみたい!みたことある?》

悲鳴に似た声が聞こえていた。

「奈々、目立ってる。ホントにイケメンすぎ…。」
結花はそっと奈々に耳打ちした。

「・・・。」



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