肉食御曹司に迫られて
そんな声には関心もないようで、湊は、
「帰るだろ?送ってく。水谷さん乗ってきますか?車なので、よければ一緒に送ります。」
と道路わきに止めてあった車を見た。

「ありがとうございます、私はもう少し飲んでいくので。奈々の事よろしくお願いします。」
と、結花は気を使ったのか、そう答えた。

「わかりました。では、失礼します。」
と、藤堂と結花に一礼した。

「行くぞ、奈々。」
と促され、慌てて、奈々も2人に挨拶をし、湊の後を追った。

そんな2人を結花や、ほかの女子社員は見ていた。
そして藤堂も見ていた。

湊は、少し先で振り返り、奈々を待つと、そっと背中に手を回し、エスコートしているようだった。
そして、湊と奈々はお互いの顔を見て、会話をしていた。

湊はカイエンの助手席を開け、奈々を乗せると、運転席に戻る時に、もう一度こっちを向き、頭を軽く下げた。
そして、ハザードランプを2回点滅させる。奈々も窓を開けて、手を振っていた。
小気味良いエンジン音を響かせ、車は走り去った。

「やばい、遊びでもいいかも。」
と呟いた結花に、

「遊びはダメだろ。」
ため息交じりに、藤堂は言った。
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