肉食御曹司に迫られて
「湊、ありがとう。ごめんね、充電切れて…。」
「ホントだよいきなり。まあ、近かったし問題ないよ。奈々の友達にも会えたし。」
と湊は微笑んだ。
「水谷結花っていうの。かわいいでしょ?」
「確かに、可愛らしい感じだな。」
クスッと湊は笑って、続けた。
「どうせ、あたしは正反対!とか思ってるんだろ?」
奈々は、その言葉に軽く湊を睨んだ。
「そんなことないから。」
と湊は言い、奈々の頭をポンとした。
(ー ホント、嫌になるぐらい、見透かされてる。)
奈々は、ふっと笑い、
「ああ見えて、結花、仕事は真面目なんだよ。」
「そうなんだ。結花ちゃんは何してるの?」
湊はサラッと聞いた。
「結花は、フロント。ちなみに、あたしはコンシェルジュ。結花とは同期入社。」
湊が驚いた様に、奈々を見た。
「B.C. square TOKYOの中のロイヤルインターナショナルホテルに努めてます。湊があった人は、マネージャーの藤堂さん。色々あって、仕事というか、自分の事を知っている人の前では、極力感情を出さない様にしてて、そんな自分を湊に知られるのが、怖かったのかも知れない。だから、今まで自分のことは、あまり話したくなかった。」
奈々は、少し自嘲気味に笑った。
「でも…やっぱり、その自分もあたしだし、湊に会って、無理して作った自分じゃなくてもいいのかな。って思えてきたから。」
湊は、これまでで1番綺麗な奈々の笑顔を見た気がした。
「だから、その一歩、明日は東京の街で湊に会いたい。いい?」
「もちろん、東京デートだな。買い物して、ランチして…そんな普通のデートしようか。」
湊も笑顔を見せた。