肉食御曹司に迫られて

「湊、ありがとう。ごめんね、充電切れて…。」

「ホントだよいきなり。まあ、近かったし問題ないよ。奈々の友達にも会えたし。」
と湊は微笑んだ。

「水谷結花っていうの。かわいいでしょ?」
「確かに、可愛らしい感じだな。」
クスッと湊は笑って、続けた。
「どうせ、あたしは正反対!とか思ってるんだろ?」
奈々は、その言葉に軽く湊を睨んだ。

「そんなことないから。」
と湊は言い、奈々の頭をポンとした。

(ー ホント、嫌になるぐらい、見透かされてる。)
奈々は、ふっと笑い、
「ああ見えて、結花、仕事は真面目なんだよ。」

「そうなんだ。結花ちゃんは何してるの?」
湊はサラッと聞いた。

「結花は、フロント。ちなみに、あたしはコンシェルジュ。結花とは同期入社。」
湊が驚いた様に、奈々を見た。

「B.C. square TOKYOの中のロイヤルインターナショナルホテルに努めてます。湊があった人は、マネージャーの藤堂さん。色々あって、仕事というか、自分の事を知っている人の前では、極力感情を出さない様にしてて、そんな自分を湊に知られるのが、怖かったのかも知れない。だから、今まで自分のことは、あまり話したくなかった。」
奈々は、少し自嘲気味に笑った。

「でも…やっぱり、その自分もあたしだし、湊に会って、無理して作った自分じゃなくてもいいのかな。って思えてきたから。」

湊は、これまでで1番綺麗な奈々の笑顔を見た気がした。

「だから、その一歩、明日は東京の街で湊に会いたい。いい?」

「もちろん、東京デートだな。買い物して、ランチして…そんな普通のデートしようか。」
湊も笑顔を見せた。
< 126 / 191 >

この作品をシェア

pagetop