肉食御曹司に迫られて
だから・・・。

「湊、お願いがあるの。」
「・・・?」
湊は、今日初めて、奈々の瞳を見た。
「今日だけは、ただの湊でいてくれる?あたしの知っている湊で。」
湊は、奈々が何か気づいていることを察した。
「…わかった。」

そして、奈々は立ち上がり、真っすぐ湊を見つめた。

「あたしは、湊の事が好きです…。」
月の光を後ろから受けながら、奈々ははっきり言った。
そして、続けた。
「湊は?」
湊はあまりにも、意外な言葉に驚き、悩んだ。
そして、一瞬目を逸らした。言ってもいいのか?
もう一度、奈々の顔に視線を戻すと、真正面から向き合う、奈々の瞳にぶつかった。
「…俺も、奈々が好きだよ。誰よりも一番。」
湊も、奈々を真っすぐ見た。
奈々は、微笑むと
「よかった。」と声を発して、そっと、湊の首に腕を回した。
湊も、そっと抱きしめた。

しばらく、抱き合った後、
「その言葉が聞きたかった。今日だけはいいよね?」
奈々は言うと、抱きしめている腕に力を込めた。
湊も、奈々の細い腰を引き寄せ、これでもかというぐらい抱きしめた。
(ー 奈々を離したくない。)
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