肉食御曹司に迫られて
時間は22時15分

テーブルに運ばれてきた、フレンチのルームサービスを見て、奈々は
「すごーい、初めてうちのホテルのルームサービス。お腹すいた。」
と、テーブルの上の料理を眺めた。
ルームサービスとはいえ、前菜、サラダ、スープ、メイン、デザートと色とりどりの料理が並んでいた。

「お祝いだ。それに、頑張った奈々へのご褒美。」

「ご褒美うれしい。頑張ったもん。」
奈々は、そういうと、きちんとパンプスを履き、席に着いた。
湊は、ワインを開けると、奈々と自分のグラスに継いだ。

「なんか、変な感じ。」
奈々はクスクス笑った。
「何が?」
「だって、今までと違いすぎ。海岸でビール片手にサンドイッチだったのに。こんな夜景の見える部屋で、ディナーとか。」
「ベタな感じでこれもいいだろ?こんな綺麗なドレスのお嬢様には、きちんとしたエスコートを。」
湊はニヤっと笑った。
「ありがとうございます。」
奈々も、笑った。
「ホント、綺麗なドレスだな。俺が一緒に行くって言ったのに、断ったからどうするのかと思ったよ。」
湊は食べながら、言った。
「母がね、一緒に選びたいって言ってくれたから。」
奈々は、穏やかな表情で言った。
「うん、確かに似合ってる。」
湊は少し照れて言った。
「ほんと?さっきから、ドレスが綺麗ばっかり言うから、ちょっとおもしろくなかったけど。」
「…本心はなかなか、言いずらいんだよ。」
「じゃあ、初めて会ったときの、かわいいとかは全部嘘だったんだ。」
奈々は、さらに意地悪を言った。
「そうじゃなくて…もう、いいだろ。」
少し拗ねたようにいった、湊を

(- 可愛すぎる…)

と奈々は心の中で笑った。

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