肉食御曹司に迫られて

すると、目の前に一台車が止まった。
「奈々ちゃん、乗って。」
と窓を開けて呼ぶ湊がいた。

慌てて、助手席に乗り込む。

「待たせた？ごめん。」
と湊は続けた。

「うんん、来たばっかりだから大丈夫。この車湊の？」
真っ黒なポルシェのカイエンのターボ車。革張りの室内からは高級な革の匂いと、低いエンジン音が聞こえる。こんな、高級車…。

「ドライブだし、こないだ送ってもらったし。」
湊の車なのか、うまくはぐらかされた気もするが、どこに行くのかも気になっていた。

そして奈々は、運転する湊をちらっと見た。
以前会った時よりも、今日はジャケットを着ているせいか、大人の男の人に見える。細身のチノパンに、ネイビーのＴシャツ、黒の薄手のジャケット。そして、片手でハンドルを握る姿にドキッとした。