肉食御曹司に迫られて

その夜、奈々は５５Ｆの会員制VIPラウンジにいた。
今日は、ここでピアノ演奏のバイトだ。
忙しくしていた方が余計な事も考えずに済む。

ラウンジの中央にあるピアノへと向かい、準備する。
ふと窓の方に目を向けると、こないだ声をかけてきた、ＡＤＩ（アーサーディレクション）の社長の姿があった。
社長と同年代であろう、金髪の外国人の男性と、後ろ姿しか解らないが、男性がもう一人。3人でお酒を飲んでいるようだった。

奈々は、金髪の男の人と、目があった気がした。
（―　すごく、キレイな人。洋画に出てきそう。）

少しその様子を見た後、演奏を始めた。