肉食御曹司に迫られて
その頃、湊たち3人は、
「こないだと同じピアニストじゃない?」
晃が言う。
「ホントだ。」
アレックスも答えて、奈々を見る。
特に湊は返事をしなかった。

「ミナトが、振られた子だ。NANAちゃんだっけ?」
と、アレックスが楽しそうに言う。
「うるさい。」
湊は、少し不機嫌に答えた。

会食が終わり、一杯だけ飲んで行こうと訪れたラウンジで、また奈々に会うなんて…。
湊は少し動揺していた。
しかし、奈々は自分のことを知らない。
ただ、今日の朝、これ以上深入りしてはいけないと思ったばかりだったので、奈々を見たくはなかった。
近づいて、奈々にバレるのも嫌だった。

(― 見ると、どうしても考えてしまう。)

なるべく、奈々を視界に入れないようにする。
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