肉食御曹司に迫られて
演奏が終わり、NANAが出て行くと、アレックスは
「僕、トイレ」
と席を立った。
湊はすぐに、奈々…と思った。
そんな、湊の気持ちを察してかわからないが、晃が
「アレックス、さっきのピアノの子だろう?
お前、日本語できないのに、どうやって声かけるんだ?」
と聞いた。

3人の会話は英語だ。

そのお陰か、周りの女の子達はチラチラ見るだけだった。


「おー!確かに。じゃあ、アキラ、一緒にトイレ行こう。トイレね。」
と、茶目っ気たっぷりに言った。

晃は
「トイレに行くだけね…」
と言うと、湊を見て
「ちょっと、行ってくる。」
と苦笑した。

湊は、2人が本気なのか、何なのかも分からなかったが、一緒に行く気にはなれなかった。
仮に、あの2人が声をかけても、奈々がついて行く事は、まずないだろう。

湊は、窓の外を見て、グラスの酒を一口含んだ。
味は良くわからなかった。
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