イジワルな副社長に恋してる!
絢香は慌てて立ち上がり、チラッと、予定表をみた。
今日から始める生徒さんだ。
【一曲弾きたい大人のピアノコース】
新規 水澤 様
水澤さん …ね。
確認し、ドアに歩いて行き、
扉を開ける。
「…!!」
「初めまして、水澤晃です。よろしくお願いします。」
と微笑んだのは、まぎれもなく男の人だった。
女の人だと思い込んでいた絢香は内心びっくりした。
「…初めまして。講師の桝谷絢香です。」
と慌てて笑顔を作り続ける。
「どうぞお入りください。」とピアノの前に案内する。
絢香は、気持ちを仕切り直して、講師の顔をした。
「今回はどうしてこちらに?」
「仕事でどうしても一曲弾くことになってしまって…昔少しやっていたんですが。」
人懐っこい笑顔と、なんと行っても女の人でもおかしくないような、綺麗な顔。
それでいて、身長は高くバランスもいい。
ジーンズにパーカーというシンプルな出で立ちでも目立っただろうその人を見て、
(ー きっと受付のミホちゃんは今頃大騒ぎだろうな…)
絢香は思った。