イジワルな副社長に恋してる!
朝、絢香は目を覚ました。
後ろから抱きしめられるような形だった絢香は、そっと、寝返りを打とうとした。
すると、晃は無意識に、絢香をギュッと抱きしめた。

絢香はふっと笑った。
晃の顔は昨日までとは違い、とても穏やかな顔で眠っていた。

(ー もしかして、すごくもろい部分があるのかも。昨日、晃を抱きしめた時、そう感じた。安堵した顔と、全部を預けるような。思っている事を口に出せない人…。)


晃をしばらく見つめ、シャワーでも浴びようかと、そっとベッドを下りようとした所、腕を掴まれた。
「どこ行く?」
捨て犬のような目をして、見つめる晃に、クスっと笑い、
「どこにも、行かない。シャワーに行こうかと思っただけ。」

ほっとした、晃の表情を見て、絢香はベッドの脇に座り、晃に聞いた。
「ねぇ、遊びじゃなく、本気であたしのこと好き?今はちゃんと答えて。」

晃は、少し間をおき、絢香の瞳を見つめると、
「絢香が好きだよ。どうしようもないぐらい。ずっと抱きしめて離したくないぐらい、好きだよ。絢香に冷たくされると、どうしていいか、わからない…。初めてなんだ。こんな気持ち。コントロールできない。」
晃は、絢香を抱きよせると、腕に力を込めた。

「今まで、確かに色々遊んできた。その事で不安にさせたりしたと思う。たくさん、絢香を泣かせて、それなのに、絢香が離れれば、離れるほど、優しくできない。俺はこんなに最低なんだ。弱いんだよ。でも、絢香を抱きしめたい。こんな俺を抱きしめて欲しい。ねぇ、俺を見て…。」
最後は、懇願するように、晃は絢香の首元に頭を埋めた。

そんな晃を絢香は抱きしめると、
「分かりずらすぎる愛情表情。」
それだけいうと、笑った。

「あなたの弱さも、優しさも、ずるさも、全部まとめて、あたしが抱きしめてあげるから、あたしが愛してあげるから…あたしにも優しくして。」

その言葉に、晃は弾かれたように顔を上げ、絢香の顔を見た。そして本当の笑顔で笑うと、絢香の唇にキスを落とした。
優しく、時に激しく、絢香を感じた。ムリやりしたキスとは、全く違うお互いが求めるキスに晃は心から安堵と幸福を感じた。


「ありがとう。俺の心を見つけてくれて。」
晃はそっと言うと、絢香を抱きしめた。
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