ドメスティック・ラブ
1.結婚しました
オルガンの音が厳かに細く長く伸びる。
あれ、精一杯抑え目に弾いてんのかな。ここよく響くから遠慮無く大ボリュームで弾いたら気持ち良さそうだけど、まあ無理だよね。
オルガンの横にはシスター風の衣装を着けた三人の聖歌隊。でも聖職者でもましてや多分キリスト教徒ですらないと思う。その内の一人は鼻の下にチョビ髭を生やしたおっさんで、衣装が似合ってない事この上ない。
一生懸命気を紛らわそうと目線を逸らしているけど、さすがに顔を左右にキョロキョロさせる訳にはいかないので、結局前方固定された視界に入るものは限られる。
正面と左右に据えられた荘厳なステンドグラス。その色とりどりのガラスを透かして入ってくる光が目の前の神父のハゲ頭をカラフルな七色に染める。笑わない様にと必死で自制するほど笑いたくて仕方なくなる。だって、丁度頭の天辺に赤い光が……!
隣に立つまっちゃんがこちらをチラッと見た気がした。
「……誓いますか?」
視線を下に下げ、一生懸命笑いを堪えて生真面目な表情を保とうとしていたら、小さい声で囁かれた。
「おい」
「え?」
「……誓いますか?」
顔を上げるとカラフル神父と正面から目が合った。
「クフッ……」
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