ドメスティック・ラブ
9.愛情表現のカタチ
「千晶、起きろー」
「────っ?!」
耳元で囁く声と共に唐突に鼻を摘まれ、気持ち良く惰眠を貪っていた私は急速かつ強引に現実世界へと引き上げられた。何が起こったのか覚醒し切っていない脳が把握出来なくて、眼は開いたはずなのに視界に入っている物を認識できない。
至近距離に、ニヤニヤと笑うまっちゃんの顔。窓から差し込む明るい朝の光が照らす、見慣れた自宅の寝室。
ガバッと勢いよく上半身を起こした私を、そのままだと顎に頭突きされていたであろうまっちゃんが器用に避けた。
「おはよう。目は覚めたか?」
自分のベッドに腰掛け直したまっちゃんが訊ねてくる。
当然パジャマ姿の私と違って、彼は既に着替え終わっていた。スーツではなく、ブラックデニムにボタンダウンのシャツという私服姿。今日は土曜日のはずだ。
「……おはよう。なんちゅー起こし方するの……てか人の寝顔そんな近くで見ないでよ……」
夢も見ず完全に熟睡していた。白目を剥いてたり、涎垂らしたりしてなければいいけど。
とりあえず手櫛で軽く髪の流れを直し、口元に手を当てる形で寝起きのむくんだ顔すっぴんを半分隠す。
「あんまり早く起こし過ぎるのも可哀想かなと思って待ってたんだけど、お前マジで起きないんだもんな」
でもまっちゃん本人は一向に気にする様子がない。
時間を確認すると、朝の七時半前だった。