ドメスティック・ラブ

 さとみんが笑う。よっしーが笑う。まっちゃんが笑う。
 年を経るごとに皆昔を懐かしむ時間なんか減ってその切ない痛みにも鈍くなっていくけれど、社会的地位や家庭環境が変わっても人柄まで変わってしまう訳じゃない。だから大丈夫、会える頻度が減っても完全に疎遠になんてならない。寂しいのも私だけじゃない。
 少なくともこんな風に言ってくれる友人達がいて、何よりまっちゃんが隣にいてくれる私は間違いなく幸せ者だ。


*   *   *


「期待させといて悪いけど、今夜は何もしないから。なんだかんだ痛いし、病院だとやっぱり落ち着かなかったからさすがにゆっくり寝たい。千晶も明日は仕事だろ?」

 手伝おうかと申し出たのに、指先を怪我している訳じゃないから大丈夫だと一人でシャワーを浴びて埃を落としさっぱりしたまっちゃんは、寝室で自分のベッドに腰掛けて傷口のガーゼを貼り替えながらそう言った。さっきまでガーゼの上から貼っていた粘着力の高い防水フィルムのせいで、剥がした跡が少し赤くなっている。
 先にお風呂を済ませ、新しいガーゼの換えを用意してスタンバイしていた私は、不意打ちのその言葉に片付けようとしていた残りのガーゼとテープを思わず取り落とした。

 今日の私はよっしーとさとみんと別れた所までしっかり記憶があるし、ちゃんと自分の脚で歩いて帰って来た。つまり、それなりに飲んだけど現時点で酔いは殆ど残っていない。

「なっ……期待なんかっ……!てか無理でしょ、そんなあちこち怪我だらけで。頭打ったりもしてるんだし、まだ運動とか激しい動きは控えた方が……」

「激しい動きってどんだけ凄いの想像してんスか千晶サン」

「ちょっ……いや、そうじゃない!そうじゃなくて!」

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