ドメスティック・ラブ
帰りの電車に乗った所で、まっちゃんから今日は普通に帰れると連絡があった。昨日はまっちゃんが歓送迎会だったので一人で簡単に夕飯も済ませてしまったけれど、今日は一緒に食べられるらしい。
会社帰りににスーパーに寄って食材の買い物をする、というのも結婚するまで実家暮らしの私には新鮮だった。飲み物やお菓子、母から頼まれた物を買いにコンビニやスーパーに立ち寄る事はもちろんあったけれど、結婚して家を出た以上毎日食事の支度も自分達でしなくちゃいけない。一応共働きだし早く帰った方が作るという事になってはいても、緩いうちの会社と違ってまっちゃんは忙しいので主に私が作る事になると思う。
スーパーの中でしばらく悩んだ結果、今夜の夕食は私のささやか過ぎるレパートリーの中からカレーライスと豆腐サラダに決めた。本を見て新しい料理に挑戦する様な時間はないし、失敗する不安のない簡単な物の方が良いだろうという目算だ。まあそもそも私の場合簡単な物しか作れない上に、まっちゃんも私が料理上手じゃないのを知っている。今更見えを張ってもしょうがない。
結婚が急過ぎて花嫁修業も何もあったものじゃなかったけれど、この先の事を考えたら少しずつ練習する必要がありそうだった。
家に着いて着替えてから料理の支度を始め、丁度カレーのルウを鍋に入れて煮込み始めた所で玄関から鍵の音がした。
「お帰りー」
リビングのドアが開いたタイミングで声をかけると、入ってきたまっちゃんが一瞬動きを止めた。
「……ただいま。カレー?」
「うん。スーツ汚しちゃ大変だから着替えてね」
「おー」