ドメスティック・ラブ
さらりと言われた単語から脳天かち割られる様な衝撃が来た。
そうか。そうだよね……。夫婦になったんだからその内子供作って産んで育てていくって事だ。実際出来るかどうかはともかく、私だっていつか子供は欲しい。子供好きなまっちゃんはいいお父さんになりそうだなあとも昔から思ってたし。
分かってる。分かってるんだけど。結婚そのものにまだ馴染んでないせいかまだまだ遠い先の出来事と言うか、そこまでの心境に至ってないと言うか、まっちゃんがあえてそれを言う事でいきなり地球半周くらいふっ飛ばされた様な気分と言うか。だって私達、そもそも子供が出来るような事、まだ何もしてない。
にも関わらず平然と子供って単語を口に出せるまっちゃん凄いよ!
「まっちゃんて呼ばれ慣れてるからそれに別に不満はないけどさ。自分の彼女には名前で呼ばれたかったりするよ、俺は」
内心目を白黒させてる私を知ってか知らずか、まっちゃんはそんな風に追い打ちをかけてくる。
彼女って……いや彼女とか恋人どころか一足飛びに嫁ですが。
初対面から呼び捨てにしてくる様なタイプと付き合った事はないので、過去の恋人達も呼び名が変わる瞬間があったはずなんだけど、どういう経緯でそうなったのか思い出せない。少なくとも顔突き合わせて呼び捨てを宣言される様なやり取りをした覚えはない。まさか三十路になってまでこんなむず痒い思いをする事になるとは思わなかった。
「……ぜっ善処します……」
「おー」
「急に変えると照れるんでちょっと時間かかるかもだけど……」
「千晶がそんなに器用じゃないの知ってるから気にすんな」