ドメスティック・ラブ
「しまっちはどこか他人事みたいだけど、結婚するっておままごとじゃないんだから。そりゃ後から何らかの理由があって離れる夫婦もいるけど、基本的にもうこの人としか恋愛しないって誓うんでしょ。まっちゃんはそれも踏まえてしまっちと結婚したんじゃないの」
「……」
この人としか恋愛しない。確かにそうだけど。
結婚式の誓いの言葉でも『命の限り心から愛し続ける』事を誓わされたっけ。そう言えばあの時私は神父の禿頭に対して笑いを堪えるのに必死になっていて、まっちゃんが誓った瞬間を聴き逃したんだった。まっちゃんは本当に私を『心から愛し続ける』事を誓ったんだろうか。つつがなく式は終わったんだからちゃんと誓ったんだろうけど、自分の耳で聞いていないせいかどうにも現実感が薄い。式の記録は写真だけで映像は残していないので再確認も出来ない。でも結婚式の誓いの言葉なんてあくまで形式上のものだ。実際どう思っていようとあの場では誰だって「はい、誓います」と答える。
まっちゃんが私と恋愛しようという気でいるかなんて分からない。たまたまお互いフリーで都合が良かったから、友情で家庭を築けると本当に思っているのかもしれない。ああでも子供作る気はあるんだっけ。まあ厳密に言えば別に愛がなくても子供を作る行為は出来るし。
「しまっちってあんまり後先考えず行き当たりばったりな所あるからなあ。でもまっちゃんの事が嫌な訳じゃなくて現状の微妙な夫婦関係に不満があるなら、しまも努力くらいしてみたら」
おっしゃる通りで反論の余地もございません。
いやでもいくら短絡的に見えてたって、さすがに私だって何も考えずに結婚した訳じゃないし、現状に不満があるという程な訳でもないんだけどな。