ドメスティック・ラブ
「……ねえ、恋愛ってどう始めるんだっけ」
「初彼でもあるまいし三十歳にもなって何言ってんの」
結構真剣な問いかけだったのにバッサリと返された。まっちゃん同様十年以上の付き合いであるさとみんはツッコミにも遠慮がない。
「何にもない状態が続いてるのがモヤモヤするなら、とりあえずどんな形でもいいからキスでもしちゃえばなし崩し的にどうにかなるんじゃない。それかもういっそ自分から押し倒せ。まっちゃんなら今更それでしまっちに引いたりしないはず」
「んな無茶な」
「私も長い付き合いの友達と恋愛に発展した事ってないから分からないけど、最初の一歩を踏み出しちゃえばきっと意外に何とかなるもんだって」
「ええー……」
さとみんの言う事も分からなくはないけど、その一歩のタイミングが分からなくて困ってるんだよ……。
次に皆に会えば間違いなく「新婚生活はどうよ」って話題になる。現状のままだと気不味い思いをしながら笑って誤魔化すしかない。
「まあ夜の夫婦生活の事はとりあえず置いておいて。それ以外はどうなの?」
「上手く……って言うか普通にやってるよー」
「確かにまっちゃんとしまなら何の問題もなさそうだけどね」
そう。結婚とか恋愛とかとりあえず置いておいて、単純に一緒に生活するという意味でなら私達は仲良くやっている。同居人としての相性はいいんだと思う。
私自身こうして友人達とワイワイ騒ぐのが何より好きだったから、毎日まっちゃんと他愛もない会話が出来るのは楽しい。