ドメスティック・ラブ
「はい、松岡です」
はっきりとは聞こえないけれど、電話の向こうで誰かが喋っている気配がする。家に入ろうかとも思ったけれど何となく一人で勝手には降りられず、私はシートに背中を預けたままになっていた。隣のまっちゃんに悟られない程度に、そっと息を吐き出す。
「えっ中村がですか……」
時間的には少し遅いけれど、学校からの連絡だろうか。日によってはまっちゃんもこの時間まだ学校いて帰って来てない事もよくあるし。
「……いや、分かりました。僕が行きます。場所は?」
ん?行く?
耳に飛び込んで来た言葉に思わず横を向いて彼の顔を見つめる。
「はい、引き取ったらまた連絡します」
そう締めくくってまっちゃんは電話を顔から離した。
肩で大きくため息をついた後、ゆっくりとこちらを見る。
「うちの生徒が補導されたらしい。保護者が来れないみたいだから引き取りに行ってくる」
……補導……。うんまあそれは教師として行かなきゃいけないのは仕方ない。
「生徒家まで送ってから帰るし、待たずに先に寝てていいから」
……ですよねー。
いや電話かかってきた時点で何となく予感はしてたんだけど。