ドメスティック・ラブ
こんな風に皆で集まれるのはいつまでだろう。前に糸井さんが三十越えたら学生時代の友達ともじわじわ疎遠になるよと言っていたはずだ。
ちなみに今夜の名目は先月結婚した私達ではなく、年齢=彼女いない歴だった一学年下の後輩に初めての彼女が出来た事を祝う会だ。彼は在学中から卒業しても色んな人に玉砕し続けてモテない事が完全に持ちネタに昇華していたけれど、それで先輩後輩含めてこれだけ人が集まるんだから結構な人徳の持ち主だと思う。まあ皆単に騒いで酒を飲む理由に飢えているせいもあるのかな。よねみーの様に誰かに愚痴を吐き出したい人もきっとたくさんいるんだろう。
隠れてこそこそ会っていた、とか二人きりで食事に行った、とかならモヤモヤする気持ちも分からなくはない。でも正直なところ、よねみーの元彼の対応は比較的誠実な気がする。多少の嫉妬は可愛い愛嬌でも、結果的に別れてしまっているのだからやっぱりよねみーはもう少し冷静になった方が良かったんじゃなかろうか。
まあそもそも私は相手を縛るのも縛られるのも苦手なタイプなので、私の物差しで計るわけにはいかないんだろうけど。
「束縛したいわけじゃないんですよぉ……ただそれがきっかけで親しくなって惹かれ合っちゃったりするかもしれないじゃないですかー、それが怖いんです……」
別れたのは一ヶ月程前だと言っていた割に、よねみーの口調は現在形だ。無意識だろうそれが彼女の未練を表しているのは私にも分かる。
段々と口調が怪しくなり机の上に突っ伏し始めたよねみーの手からようやく私はグラスを取り上げた。彼女の手の届く範囲からお酒の入ったグラスを遠ざけ、代わりにウーロン茶と水の入ったグラスを配置する。
「ほらよねみー、飲み過ぎだって。ちょっと一回お水飲もう?」
「うー……気持ち悪い」
しまった、時既に遅し。愚痴の勢いに飲まれてる場合じゃなかったらしい。