ドメスティック・ラブ
「マジで?どうする、トイレ行く?」
口を手で多い、背後の壁に寄りかかっているよねみーに訊ねると、彼女は無言で目を閉じたまま少しだけ顔を縦に動かした。
立ち上がった私はうずくまっているよねみーを引っ張り上げようとしたけれど、体格差のせいもあって力の入らない酔っ払いの身体は私の腕力ではどうしようもない。
「おい、さすがにお前じゃ無理だろ。俺が行くよ」
ちょっとだけ焦っていると、トントンと指で肩を突付かれた。振り返るといつの間にかどこから現れたのかまっちゃんが背後にいる。
「あー、よねみーちょっとだけ我慢して。ゆっくりでいいから立って、トイレ行くぞ」
まっちゃんはそう言って私の代わりに前に出ると、私じゃ全く動かせなかったよねみーの身体に腕をまわし、支えて起こす。彼女を抱きかかえるようにしながら、まっちゃんは爪先ですぐ側に座っていたタザキチの膝を小突いた。
「おい、ちょっと手伝って。こいつトイレまで連れてく」
「え、何、よねみー潰れた?」
慣れたものでそう言いながらタザキチも立ち上がり、二人でよねみーを抱えて座敷を出て行く。少し離れた所からこちらの様子をうかがっていた依ちゃんがすかさず水の入ったコップを持って後を追った。ぞろぞろとついて行っても仕方ないし、よねみーも無駄に大勢に醜態を晒しても嬉しくはないと思うので、私は素直に座り直して「任せた、よろしく!」と手を振る。誰よりチビな私はこういう時基本的に役に立たない。
よねみー、戻って来た時にはちょっと回復してるといいんだけど。
「……しまっち先輩、ああいうのは妬いたりしないんですか」