ドメスティック・ラブ

 まっちゃんと別れてからサークル関係の集まりには顔を出していないはずだ。でも今回の宴会は私達が三年生時の一年から四年が集まっている。連絡がつく人には一通り声をかけているはずだから、もちろん彼女が来ても何もおかしくはない。
 姿を見るのは三・四年ぶりなのに、最後に会った時と殆ど変わっていない。相変わらず綺麗な人だった。

「……ちぃちゃん先輩!」

 隣で今ちゃんが大きな声を出したので部屋のあちこちにいた皆が一斉にこちらを振り返った。

「久しぶり」

 戸を締めながら先輩が手を振る。
 まっちゃんの元恋人。学生時代から皆の憧れの綺麗で優しいお姉さん。『ちぃちゃん』こと梶尾智沙先輩。
 うちのサークルは新入生時に一人ずつニックネームをつける事になっている。参加届を出す時に普段の呼び名を自己申告してもいいし、そうでなければ先輩達が決めてくれたりもする。私は子供の頃から圧倒的に『ちぃちゃん』と呼ばれる事が多かったけれど、一学年上に既に『ちぃちゃん』がいたのでここではその呼び名は使えなかった。だから『しまっち』『しまちゃん』と呼ばれるようになり、今に至る。

「今ちゃん、初カノおめでとう。滑り込み、三十なる前に間に合ったね。遅くなったけど祝いたくて来ちゃった」

「あざっす!!」

「……しまちゃんも」

 そう言って先輩は私の顔を見てニコッと笑った。

「結婚、おめでとう」

「ありがとう、ございます……」

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