ドメスティック・ラブ
別に私と先輩は仲が悪かったとかそういう事はなくて、会えば普通に喋るしお互いただの先輩後輩の中の一人だった。
先輩が付き合ってた当時のまっちゃんに「しまちゃんと仲良くし過ぎないで」と言った話は私は人づてに聞いたし、もちろんまっちゃんが私に直接話した訳でもない。そもそも当時の私達には一切の恋愛感情はなく、さっきのよねみーの彼氏の様に二人で会ったりもしていなかったので、それを聞いても結局いつも通りこんな風に皆で集まってる時にワイワイやってただけだし何も変えようがなかったんだけど。
それでも先輩と別れた後まっちゃんが本当に私と結婚しちゃったんだから、彼女の第六感は正しかったのかもしれない。やっぱりそうだったじゃないかと呆れられても仕方ない。
「うおー、ちぃ久しぶり!お前レアキャラ過ぎるだろ」
「久しぶりー。やだ、こばやんしばらく見ない内にちょっと老けた?」
こばやん先輩が大声で反応したので梶尾先輩はそっちに向かって歩いて行く。
「あ……」
まりっぺが先輩の後ろ姿と私の顔を見比べている。
こばやん先輩の斜め向かいには今まっちゃんが座ってる。
まりっぺだけじゃない。皆がちらちらとそっちを気にしてるのが分かった。だってこの場にいる人間でまっちゃんと先輩が付き合ってたのを知らない人なんかいない。
それだけじゃない。
皆で集まった時に今のサークルメンバーの中なら誰が一番タイプかっていう暴露大会でまっちゃんが先輩の名前を挙げ、その後事ある毎に「ちぃちゃん先輩いいよなあ」って言っていた事。当時先輩には彼氏がいたけれど、卒業してからの飲み会で席が隣になりお互いフリーだという事が分かって急接近した事。付き合って最初の誕生日に指輪と旅行をプレゼントした事だって私は知っている。指輪のブランドと旅行の行き先は同学年メンバーで集まった時に無責任なアドバイスを散々した。いつから本気になっちゃったのなんて散々冷やかした。